◆夢のヴェルサイユ宮殿

 まるで夢の世界に迷い込んだ感じであった。「史上、最も大きく最も豪華な宮殿を建てよ」と命じたのは太陽王ルイ14世であった。その通りにフランスは莫大な費用を費やし、50年間もの長きに渡り総力を挙げて建設に取り組んだ。完成したのは1710年だから丁度300年前のことになる。

 贅を極める宮殿内部は目も眩むほどの絢爛豪華であった。なかでも「鏡の回廊」は1871年にドイツ皇帝ヴェイルヘム1世の即位式が行われ、更には1919年「ヴェルサイユ条約」の調印が行われ場所でもある。長さ75m、幅10m、高さ12mという壮大なスケール。見上げると天井にはルイ14世の生涯が描かれていた。そしてゴージャスなクリスタルのシャンゼリア、578枚もの大きな鏡は圧巻であった。それは装飾芸術の傑作中の傑作といっても過言ではなかった。こうした部屋が延々と続いているから驚きである。

 もともとこの場所は沼地であったが、森を移し川の流れを変えて大自然を大改造したもの。建物のゴージャスさもさることながら、約100ヘクタールもの広さを誇る庭園も見事なものであった。美しい幾何学模様が描かれたフランス式庭園。ルイ14世は庭園の工事現場にも毎日曜に見て回り、大事な来客達のため最適な庭園巡りのコースまで書き残している。

 民衆の犠牲の上に立つ権力ほど恐ろしいものはない。ヴェルサイユ宮殿は正にその象徴であるように思われる。しかしユネスコ世界文化遺産に登録された現在、世界中より見学者が絶えない。人類が残した素晴らしい作品は多くの人に大きな影響を与えると共に、その富は今後とも莫大なものとなり経済効果も計り知れないものとなろう。

撮影2009年冬