◆景勝地・恵那峡

 エメラルドグリーンが美しい大きな湖であった。岐阜県にある恵那峡は木曽川の中流に位置する日本初のダム式発電所のあるダム湖である。ここは大井ダム付近から上流へ約12kmにわたる渓谷を云う。静かな湖面には遊覧船が両岸に深く侵食されて高く聳え立つ岩壁の間を滑り抜けていく。そこは屏風岩、獅子岩、軍艦岩、鏡岩などの奇石・怪石が造り出す雄大な自然美である。

 ダム建設が問題になっている現在。長野県をはじめ全国的にその波動は広がっている。経費削減が最も大きな理由なのだろうが、自然破壊や景観を損なうケースもあるようだ。しかしこの恵那峡を見る限り約80年の歳月を経た今では、自然の造形と人工物が見事に融合した四季折々の色彩際立つ景勝地になっている。

 恵那峡は中央自動車道の開通以来、首都圏、中部圏からの交通便が良くなったこともあり、風光明媚な行楽地として一層多くの人から人気を得るようになった。周辺には恵那峡ワンダーランドや恵那峡カントリークラブ、恵那峡ロープウェイをはじめ観光施設が数多く誕生した。しかし東京のディズニーランド、大阪のUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)をはじめ、近年若者の興味をそそるレジャーの多様化により、徐々に観光客も減少しているようである。

 その時代にマッチした観光地。そして魅力ある観光施設は人の心を捉えることは確かだ。新しいものを求め、より楽しいものを追求するのは時の流れである。しかしそれが永続するとは決して思えない。目の前に見る恵那峡県立自然公園は10年、50年、100年経たとしても同じ自然の美しさを我々に与えてくれるに違いない。

撮影2008年秋