◆柏原藩陣屋跡

 時代劇のシーンにでも出てきそうな「長屋門」前で立ち止まった。入母屋造(いりもやづくり)・桟(さん)瓦葺(かわらぶ)きのこの長屋門は1714(正徳4)年に藩邸造栄時の表御門で、全長21m、奥行4m、正面の大扉の両側には出格子が設けられている。正面向かって左側が番所で右側は馬見所となっている。ここは兵庫県丹波市にある柏原藩(かいばらはん)陣屋跡(国史跡)。また山々に囲まれ日本海と瀬戸内海を分岐する自然豊かな城下町でもある。

  長屋門をくぐると安土・桃山時代の様式を残す書院造り表御殿がある。一目見た時にお寺の正面ではないかと思えるほど、重厚で見事な檜皮葺きと瓦の葺きの玄関であった。

  この陣屋は織田信長の二男・信雄の直系である織田信休が造営したもの。それ以降、柏原藩主織田氏10代の居館として廃藩となった1871(明治4)年まで続いた。廃藩に伴い広い敷地は病院や学校に生まれ変わり、現存するのは長屋門と表御殿の一部のみとなっている。

 暫し300年前にタイムスリップするかのように目を閉じて当時に思いを馳せてみた。心地よい秋の風が頬を撫でる。山間部を流れる古い歴史の香りが漂ってくる。長屋門と表御殿の間立っていると、私の好きな人気娯楽テレビ「水戸黄門」のシーンが映ってくる。大奥に出てくる煌びやかな着物姿のお姫様。ちょん髷姿の男達。一つの作品が頭の中に展開される。悪代官を懲らしめる水戸黄門に角さん助さん。ここはロマンが更に広がる世界なのだ。

2008年秋