◆優雅な平等院の姿

 10円銅貨は1円玉に次いで2番目に製造枚数が多い硬貨である。子供に頃よりいつもポケットの中にある最も親しみのあるコインだ。1951(昭和26)年から使用され、裏面のデザインに採用となったのが平等院の鳳凰堂であった。これは日本を代表する文化財で優雅な建物に特徴があるようだ。建立されて約1000年の歳月が流れた今、建物をはじめ数々の文化財が「世界文化遺産」に登録されるまでになった。

  平等院を訪ねた日は小雨降る生憎の天気であった。しかし鳳凰堂を見た時、とても初めて会ったような気がしなかった。以前から親しい関係にあったような不思議な懐かしさを覚えた。これまで何度も何度も10円玉で見てきた鳳凰堂の本物が、目の前にすごい迫力で存在したのだ。 この平等院は平安時代の1052(永承7)年、時の権力者・関白藤原道長によって開創され、鳳凰堂はその翌年に建立されている。

 その当時は実に豪華で壁の色も鮮やかな朱色であったようだ。平安貴族が夢見た極楽浄土の宮殿は池の中島に建てられており、水面に映るその美しい佇まいは約1000年経った今も、見事に継承されてきている。それはまさに「日本の宝」であるように思えた。

 また平等院の庭園は広くそして美しく整備されていた。浄土式の借景庭園として史跡名勝庭園に指定されている。院内の庭園をゆっくり静かに散策していると、平安時代の優雅な美の空間の中を夢心地でいるような気分にさせてくれる。