◆清水の舞台

 「清水の舞台から飛び降りたつもりで」とは、思い切った行動を決断する時に使われる言葉である。誰もが人生の中で一度や二度、生死を分けた経験があるのではないだろうか。この清水の舞台とは、1994年にユネスコの世界遺産に登録された京都東山区にある、崖の上に建てられた清水寺本堂のことである。この本堂から8mほどせり出した舞台は、舞台造りといわれる建築様式で高さは13mある。18本の太柱に縦横139本の硬いけやきだけで組み合わせ、釘などは一切使わず高度な建築技術を駆使したものである。

 寺の歴史は今から1200余年前の奈良時代の終わり778年に、音羽山の中に草庵を開いたことに始まる。その後この周辺は平安末期の興福寺と延暦寺の争いにまきこまれ、たびたび焼き払われ、現在の堂宇は1633(寛永10)年、3代将軍家光によって再建されたものが多い。

 境内の広さは13万平方メートル。その広大な敷地内に建ちならぶ国宝の本堂・舞台と、重要文化財の数々の建築が美しく山合いに映え、春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪景色と日本の四季それぞれの美しさを演出してくれている。

 ここには小学生の遠足以来、何度も訪ねたことがある私の大好きな京都観光スポットの一つである。特に本堂に至る門前市をなす密集した土産物店は、まるで毎日が縁日のよう賑わっている。昔の情緒漂う雰囲気の中での買い物は楽しい。清水の舞台から飛び降りたつもりで、妻に少々高価な土産物を買ってしまった。

2008年冬