◆丹波焼の郷

 私の家から一番近くにあるお店が「瀬戸物屋さん」であった。お茶碗、湯のみ、お皿、丼鉢、急須など、広く焼物を指す総称であった。少なくとも神戸の町はそのように呼んでいた。自分のお茶碗が割れてしまうと、母は「そこの瀬戸物屋さんで買ってあげるからね」と。

 焼物に興味を持ち出したのは、今から20年前からであろうか。それまでは食事時に必要な程度でしかなかった。しかし私の友人家族とともに、佐賀県の有田焼の町を見学した時のことである。素晴らしい磁器の美しさを見せられたとき、新たなる感動を覚えたことから始まった。

 我が家に食事を招待することがたまにある。その時のお持て成しの一つに器にこだわるようになった。当然高価なものには手を出せないが、形、色合い、大きさなど気を使うようになった。それにともないテーブルクロスにも、箸の種類、箸置き、コースターなどにも意識は拡大していった。

 兵庫県篠山市今田町にある「丹波伝統工芸公園 立杭陶の郷」は、伝産会館、伝習会館、観光物産センターのほか、迫力のある登り窯には大きな興味を持った。山の傾斜面に作られた登り窯は400年以上の歴史があった。この登り窯では松薪の灰が器の上に降りかかり、釉薬と溶け合って窯変し「灰被り」と呼ばれる魅力的な色・模様が特長となっている。

 私が初めて焼物に挑戦したのは、ここ丹波の立杭焼きであった。柔らかい粘土と格闘しながら湯呑み茶碗を作ってみた。思いのほか難しいものであった。最後に仕上げで広がりすぎて、結局はお皿に変身してしまった。しかし焼き上げて自宅に届いたものを見てみると、さすが丹波焼風に見えたのが嬉しかった。チャンスがあれば続けてみたいのだが。

撮影2007年夏