◆道後温泉駅

 路面電車の駅にしては実に立派な建物であった。1911(明治44)年に建築された旧駅舎を明治洋風建築の外観で復元されていた。それはまるで異人館のような建物で、看板には道後温泉駅とあった。この鉄道は愛媛県松山市内を走る伊予鉄道城南線で、道後温泉駅はその終着駅となっている。

 路面電車は道路上に引かれた線路の上を、鉄道車両よりやや小さな電車がゆっくりとしたスピードで走っている。人口の密集した市内の短い距離ではあるが、これまで大切な市民の足となってきた。その歴史は古く1895(明治28)年に京都電気鉄道からスタートしている。最盛期には67都市にまで運行が拡大した。しかしバスの普及と自家用車の発展により、やがて日本は車社会に大きく変化していった。そして昭和40年代から路面電車は次第に姿を消し、現在では19都市で辛うじて生き残っている。

 道後温泉に行くには安くて便利な乗り物である。駅周辺には坊ちゃんカラクリ時計、足湯、句碑、湯釜などがある放生園。歴史漂う道後温泉本館、松山市立子規記念博物館、湯築城跡等があり、連日たくさんの観光客で賑わっている。ここは四国のなかでもトップレベルの観光地なのだ。

 特に温泉があるのが強みだ。普通の観光地であれば一度訪れるとそれで終わるが、温泉は何度でも行きたくなるのだ。町のなかをレトロな蒸気機関車風の電車が走っていた。坊ちゃん列車といわれており、観光客への配慮なのであろう。

撮影2007年夏