◆日本のへそ

 母と子の絆は強い。出生前の受胎の時に、へその緒を通じて母胎から栄養素や酸素を得ており、それは母と子の生命を結ぶ証でもあった。出生後は人為的に切断され、母子別々の肉体となるのだ。腹部にある窪みがへその緒の痕跡であるが、出生後は必要のない器官だそうだ。子供の頃にへその穴にある、黒いゴマのようなものを穿っていると、母から叱られたことを記憶している。「お腹が痛くなるからやめなさい!」と。

 日本各地でふるさと創生キャンペーンや、地域活性化が叫ばれているなか、兵庫県西脇市は「日本のへそ」を宣言。市内を統計135度・北緯35度の交点が走っていることから、日本のへそに位置している町となったのだ。ここは兵庫県のほぼ中央に位置しており、中国山地の東南麓に県下最大の加古川と、支流である杉原川が合流する所に市街地は開けている。豊かな自然に囲まれたこの町は、昔から織物が有名で発展している。更には「鰍ェまかつ」や、「オーナーばり」に代表されるように、釣具メーカーのメッカでもあるのだ。そして新しくは半導体産業も定着しつつあるようだ。

 日本のへそ公園を散策した。経緯度をテーマとした地球科学館「テラ・ドーム」があった。そこには国内最大級の81cm大型反射望遠鏡を備える天文台があり、大人から子供に至るまで科学を楽しめる場所となっている。山頂には不思議な4本のポールが立っていた。その交点が人工衛星で測量したもう一つの日本のへそとなっているとか。

撮影2007年夏