◆最高傑作の姫路城

 それは芸術であった。窓を開ければそこには姫路城の天守閣が見えた。思わずその美しさに感動の声を上げてしまった。まるで一幅の大きな絵画を見ているようでもあった。計り知れない高価な絵であることは間違いない。友人宅を訪問した時の思い出である。

 1993(平成5)年12月。ユネスコの世界文化遺産に奈良・法隆寺と共に登録された姫路城。その前に国内にあっては城として、姫路城のほか、犬山、松本、彦根が、国宝に選ばれる至宝でもあったのだ。

 姫路城の歴史は古い。鎌倉時代に天皇を守らんと挙兵して、姫山に砦を築いた赤松則村から明治維新まで、城主は13氏48代を数える。その間、羽柴秀吉の中国大返し、徳川家康の孫娘・千姫のお興し入れなど、数々のエピソードが残されている。

 現在に至る姫路城を築いたのは、徳川家康の二女督姫を妻とした池田輝政であった。関が原合戦の功績を買われ、翌年の1601(慶長6)年より8年がかりで築城している。この頃には日本の築城技術も完成期に達しており、荘重さと共に要塞としての二つの役割を兼ね備えた、歴史上最高傑作となったのである。

 ここには小学校の遠足を始めとして、遠来の友を案内して何度も見学したことがある。天守閣の最上階から見る景色は圧巻であった。まるで天下人にでもなったような気分にさせてくれる。世界文化遺産となった今、人類共通の宝として皆で永遠に守っていきたいものだ。

撮影2007年春