◆くいだおれ

 大阪は「くいだおれ」(食の町)、京都は「着だおれ」(着物の町)、神戸は「履きだおれ」(靴の町)、堺は「建てだおれ」(ベッドタウン)というような話を聞いたことがある。実にその地域を的確に表現しているように思えた。「○○だおれ」とは倒れると言う意味があるのであろうが、本質的には道楽といった方が良いのかも知れない。

 大阪はキタに対してミナミという繁華街がある。ナンバ、心斎橋周辺の庶民的な地域を指している。そのなかに大阪の「くいだおれ」を象徴する場所が道頓堀商店街である。通りを歩いているとお店の壁には、赤く茹であがった大きな松葉蟹の模型があり、しかも足が動いているのだ。見るからに食欲をそそる。ここには外国から一時帰国した知人とともに、カニ料理を食べたことがある。年末は広い店内であっても、各階ともたくさんのお客で、賑やかに盛り上がっていたことを思い出す。

 さらに歩くと大きな店の前に人盛りがあった。そこにはユニークな「ちんどんや」姿の人形が立っていた。街行く多くの人達がこの前で記念撮影していた。この辺り一番の人気者かも知れない。このビルにも職場の食事会で訪ねたことがある。通りにはこのほか大きなふぐの看板の店もあった。そして大阪名物たこ焼き、お好み焼き、活気のあるラーメン屋等々、行列が出来る店もあった。どれもこれも見るからに食欲をそそるものばかりである。

 この街を歩いていると、何故か心がウキウキ楽しくなってくる。まるで私には毎日が、お祭りのように見えてくる。ここは大阪名物「くいだおれ」の街なのだ。

撮影2007年春