◆人形浄瑠璃の世界

 人の心を楽しませる娯楽は、人類の誕生とともにあるように思う。現在に至っては音楽、文学、芸術、スポーツ等、その種類と数は幅広く多岐に渡っている。長い歴史の中で刻一刻と進化し発展するものもあれば、必死で守り努力するも衰退を余儀なくされていくものもある。半世紀前に出現したテレビ文化の発展は、実に大きいな影響力があった。そして国際交流により様々な変化が生まれている。

 徳島県吉野川下流近くに、人形浄瑠璃の野舞台のある阿波十郎兵衛屋敷を見学したことがある。「とと様の名は阿波十郎兵衛、かか様の名はお弓と申します」有名なセリフである。人間ドラマの悲しい心情を見事な人形の動きで表現している。暫し感動し目頭を熱くしたことを覚えている。

 1984(昭和59)年、大阪市中央区に新しく国立文楽劇場が完成した。日本の伝統芸能の一つである人形浄瑠璃は、初世植村文楽軒に始まり、「文楽」として大阪で発展していった。300年以上の歴史は世界でもトップクラスの人形劇となり、人形浄瑠璃文楽は世界無形遺産にも指定された。

 主な作品は江戸時代から見て過去の出来事を扱った「時代物」として、「義経千本桜」、「国性爺合戦」、「奥州安達原」等がある。さらに江戸時代のことを主題にした「世話物」には、「心中天網島」、「曽根崎心中」、「新版歌祭文(お染久松)」等がある。

 日本の伝統芸能は大きな岐路に立っているように思う。それは厳しい練習、師弟関係の難しさ、金銭的な問題、社会的認知度の低下、若者へのアピールの弱さ等、挙げればさらに出てくる。このままにしておけば衰退は必至だ。今こそ援助の手を差し伸べる必要があうのではと思う。

撮影2007年春