◆大山崎山荘美術館

 アサヒビール「スーパードライ」の出現は、ビール業界の歴史的な革命であった。味もさることながら、これまでにない口当たり、のど越しの良さが売り物であった。そしてあうコール分5.5度は、これまでのビールと比べやや高めで、量の割には酔いが早いのかも知れなかった。

 とにかく毎日毎日、スーパードライの広告を見ない日はなかったほど。広告効果の結果はまさに偉大であった。想像を遥かに越す売り上げが続いたのだ。嬉しい悲鳴とはこのことだ。これまで業界のトップを君臨してきたキリンビールも真っ青となった。スーパードライは何と、キリンラガーを抜いて売り上げナンバーワンに。これは奇跡の出来事であった。以来、私もスーパードライの大ファンとなってしまった。 大阪との県境のほど近い京都・天王山麓に、美しい木造建築の洋館があった。これは実業家・加賀正太郎が別荘を建てようと、木津川、宇治川、桂川が合流する景勝地付近に、1917(大正6)年に完成している。

 その後1967(昭和42)年、加賀の手を離れ、所有者は転々と移り変わったが、不動産会社のマンション建設に住民より反対運動が起こる。その解決策として荒巻京都府知事は、当時のアサヒビール樋口廣太郎社長に、景勝保全のため山荘を買い上げてもらう。そして1996(平成8)年に京都府と大山崎町の協力で、「アサヒビール大山崎山荘美術館」として蘇っている。その中で建築家の安藤忠雄氏に、新館の設計を依頼。周りの景勝を配慮して、地中にギャラリーを作り上げたのだ。素晴らしい先人からの遺産を、私達は大切に受け継いで生きたいものだ。

撮影2006年秋