◆日本一のそば処

 「よ〜い スタート!」開始の合図とともに、一斉に皿そばを食べだした。50−60人が胸にゼッケンナンバーを付け、5分間に何枚食べられるかを競うもの。私は見学に行っただけだったが、周りからの進めもあって参加させられた。結果は52枚食べて最高枚数となった。しかしルールにより女性には10枚のハンディーが与えられており、43枚食べた人が優勝となった。小柄な女性の優勝に会場は大いに盛り上がった。私は彼女の引き立て役となったようだ。

 兵庫県の北に位置する豊岡市内に、出石(いずし)という地名がある。そこは日本一の手打ち皿そばの名所となっている。薬味にはネギ、山葵、大根おろし、とろろ、卵が用意される。好きなように食べればいいのだが、一人前で5皿のそばが付いてくる。最後に熱いそば湯で一杯が堪らなく美味い。この地の信条「三たて」とは、挽きたて、打ちたて、湯がきたてとなる。観光地もあってか、値段は少々高めのような気がするが味は極上である。この小さな町に50軒以上のそば屋が、ひしめき合っている。

 何故この地にこれだけのそば屋が繁栄したのか。それは1706(宝永3)年、信州のそば処・上田より、出石藩主として仙石氏がお国替えとなった際、そば職人をここに連れてきたのが始まりであった。更に透きとおるような白を特長とした「出石焼」の焼物を発展させる。今ではこれらは国の伝統工芸品に指定されている。歴史は力であり伝統である。今年で300年を迎えた。

 山麓に出石城の隅櫓が見えるように、城下町として発展した出石は「辰鼓楼(しんころう)」が町のシンボルになっている。これは江戸時代に登城を藩士に伝えた太鼓があった木造の塔である。明治時代に太鼓は、時計に代わって取り付けられている。ここは歴史を楽しませてくれる町だ。

撮影2006年夏