◆上野不忍池

 前回訪ねた時は、確か冬であったように記憶する。東京は上野公園にある不忍池の名物・ハスの葉は、枯れてしまっており茶色一色であった。見るからに寂しい気持ちになってくる。しかしこの辺りは冬の方が賑やかであるようだ。と言うのも毎年ここには、数え切れないほど多くの渡り鳥が飛来する。その殆どがカモの種類である。その他にもカイツブリ、カワウ、キンクロハジロ、オオバン、ユリカモメ、ウミネコもいる。そう!ここは大都会の「水鳥の楽園」なのだ。

 1966(昭和61)には鳥獣保護区に指定されている。しかし心無い一部の人間により、精巧な弓矢によって狩猟され、傷つけられる事故があとを絶たない。毎年のようにカモの首に身体に、矢が刺さったままの痛々しい映像が、ニュースで報道されている。見ているだけで悲しみが込み上げ、とても残念でならない。

  今回訪ねたのは初夏の不忍池であった。一面がハスの葉っぱで覆われており、池といっても水面がまるで見ない。つまりここはハス池なのだ。色美しく大きな花を咲かせるハスは、開花にはまだ少々時期が早かったようだ。しかしこれまで見たハスの印象は「花の王様」のように私は思っている。このような情景は江戸時代にも、広く世に知られていたようである。ハスといえばレンコンが付き物であるが、その昔より池畔には60軒もの料理店が軒を並べており、名物・レンコン料理やハス飯を食べさせてくれていた。さらにこの周辺は、四季折々の自然タップリの魅力を持っている。特に春の季節には「お花見」の名所として、都民の憩いの場となっている。

 自然豊かな不忍池を近くによってジーと見ていると、所々でハスの葉っぱの切れ目があった。そこを大きなコイが悠然と泳いでいた。そして一匹の亀が現れ、足を必死でもがきながら行過ぎていった。それは静かな都会の昼下がりのひと時であった。

撮影2006年夏