◆奈良市写真美術館

 私は写真家でもなければ、カメラの専門家でもない。全くの素人である。そのことは私自身が一番良く知っている。人間は安易な方向に走る性格を持っているが、間違いなく私もその一人である。230万画素の玩具のようなデジタルカメラを買ったのが4年前。更に630万画素のキャノンの本格的なカメラを買ったのが2年近く前。はじめにカメラの説明書をよく読んで使えばいいものを、写す方の楽しみが優先してしまう。より便利で賢い機能が搭載されているにもかかわらず、それなりの写真が撮れると満足してしまう。向上心に欠けたバカな私だと今も反省している。

 奈良公園近くの細い道を入っていくと、奈良市写真美術館の美しい建物があった。周辺の調和を考えてか一階建ての建物には、歴史をイメージする瓦屋根がとても美しく思えた。そして現代アートで「水煙」という作品が、庭一面に張られた水の中に立てられていた。展示場は全て地下に設けられている。写真をメインとする日本でも珍しい美術館は、1992(平成4)年にオープンしている。ここには奈良・大和路の風物を撮り続けた写真家・入江泰吉の8万点にも及ぶ作品が収蔵されているとのこと。

 私が訪ねた時には「十人の大和路――風景に魅せられた写真家たち――」の写真展が開催されていた。一枚一枚興味深く観賞させて頂いた。たとえ一枚の写真であってもそこには、写真家の個性、ポリシーに近い感情、それに限りない努力と執念を強く感じ取れた。改めて奈良には古き伝統の風景から、美しい自然がたくさん残されていることに気付かされる。今の私には技術的にも時間的にも、真似ようにもとても出来そうにないことを感じた。でも大いに勉強になった。美しい写真に触れて何か心が洗われる思いがした。そして喜びの感動が残った。

撮影2006年夏