◆歌姫・美空ひばり

 館内に入ると私の大好きな歌声が聞こえてきた。

「♪〜知らず知らず 歩いてきた 細く長い
 この道振り返れば 遥か遠く 故郷が見える
  でこぼこ道や 曲がりくねった道 
地図さえない それもまた人生
  ああ 川の流れのように とめどなく
 空が黄昏に 染まるだけ 〜♪」

 この曲を初めて聞いた時、人間の人生を歌った素晴らしい歌詞、そして美しいメロディーに誰もが感動を覚えたに違いない。これは1988(昭和63)年に発表された、美空ひばり最後のヒット曲「川の流れのように」である。

 京都・嵐山の「美空ひばり館」を訪ねた。私にとって知られざる美空ひばりの横顔に接し、改めてその偉大さに驚きを隠し切れなかった。美空ひばりは1937(昭和12)年5月29日、本名:加藤和枝として横浜市磯子区にて出生。若干9歳で初舞台を踏んでより、1988(平成元)年6月24日に永眠。51年間の人生であった。

 その間、多くの国民に感動、喜び、勇気、涙・・・を与え続けてきた。歌手として1035曲。映画俳優として158本に主演。そして舞台では89作に主演した。日本レコード大賞「柔(やわら)」をはじめ、数々のビッグタイトルに輝くと共に、新宿コマ劇場での「女の花道」での舞台出演。そして病より復帰しての東京ドーム?落とし公演「不死鳥コンサート」では、2時間30分・40曲を熱唱。約5万人のファンを魅了した。

 「一人の人間がここまでやれるのか」と、私は改めて感動した。人間長く生きるだけが目的ではないことが分かる。その中で何をしたか、何を残せたかが大事なのであろう。日本政府は彼女に国民の総意として、「国民栄誉賞」を贈っている。これは女性として初の受賞であり、永遠に「美空ひばり」の名は残るに違いない。「ありがとう、お疲れ様、これからも宜しくね!」

撮影2006年夏