◆美しき桜の山

 子供の頃は桜の花を見て美しいとは思っても、そんなに好きではなかった。その理由は咲いたかと思うとアットという間に散ってしまう。桜を楽しむ暇が無いのだ。もう少し長く咲いていてくれたらと願うものの、皮肉にもこの時期に限って、菜種梅雨とも春の梅雨とでも言うのか、雨の日が多く更に風の強い日もある。そのため一層早く散ってしまうようで残念でならない。テレビ・新聞のニュースで、桜は今週の土日が見頃との情報を教えてくれる。それは先週でも来週でもダメで、今週しか見頃のチャンスはないのだ。

 世界遺産に選ばれた奈良の法隆寺近くを車で走っていた。このあたりは最古の木造建築・法隆寺を始め、1200年の歴史が漂う地域である。そう思って周りを見ていると、何もかもが歴史を感ずるように見えてくるから不思議だ。ふと遠くに目をやると、白っぽいベールに包まれた山が見える。この時期それが桜の山であることがすぐに見当が付いた。近づいてみると一面が桜の山であった。

 この見事な桜を見ていると、子供の頃に読んだ「花咲かじいさん」の童話を思い出した。優しいおじいさんとおばあさんに対して、欲張りなおじいさんとおばあさんがいた。犬を可愛がっていると、大判小判に恵まれ、欲を掻いて犬をいじめるとガラクタを掴まされたりする話だ。優しさと欲張りの対比が実に面白い。最後のところで、優しいおじいさんが灰を振り撒くと、今まで枯れていた木々から、見事な桜の花がいっぱいに咲く場面があった。その場面と目前にある一面桜の山がオーバーラップしたのだ。 それは「三宝山」と呼ばれ、聖徳太子ゆかりの地・斑鳩の里にあった。横には竜田川が流れ、のんびりと釣りを楽しむ姿も見られた。そしてその両岸にも美しい桜が咲き乱れていた。

撮影2006年春