◆幻想的な夜桜

 我が家に横山大観の「夜桜」(コピー)の絵が、しばらくの間であったが掛けられていた。篝火の炎に照らされて、周りの暗さの中にあって、桜の木と淡いピンクの花弁が浮き上がっていた。実に幻想的で見事な夜桜であった。お陰で我が家は毎日が春であった。

 数人の友人と共に、近くで買った弁当とビールを持って夜桜見物と洒落込んだ。時折散歩をする人に出会うものの、宴会をしている人はいなかった。しかしせっかく持ってきたのだからと、弁当を広げビールを飲むと、ブルブルと身震いがしてくる。寒いのだ。本当に震えるほど寒いのだ。桜を見る余裕など全くない。楽しいはずの対話もなく、ただ食べるだけで終わってしまった。この時期気候は激しく変化している。お陰であくる日は風邪気味で、2〜3日は調子が悪かったことを覚えている。それ以来、夜桜とはご縁がなかった。

 全国各地それぞれの自宅から桜の花、桜並木、桜公園など、春爛漫を見ることが出来ることでありましょう。私の自宅からもすぐ近くにある川沿いに、美しい桜並木を見ることが出来る。夜景・夜桜を撮る練習も兼ね、散歩がてらにカメラを持参して出かけた。そこには夜桜用のピンク色のボンボリが風に揺れていた。頭上を覆う桜トンネルの中を歩いていると、優雅な気分にさせてくれる。桜の花の生命は短いものであるが、精一杯カメラのシャッターを切った。この素晴らしい一瞬が、何時までも写真として残りますようにと。願いを込めて「カシャ!」

撮影2006年春