◆六義園の池

 300年の歴史を持つ優雅な日本庭園・六義園(りくぎえん)を訪ねた。そこは東京JR山手線・駒込駅より徒歩7分。閑静な高級住宅街の一角にあった。高い塀で囲まれたなかに入ると、まるで別世界の風景と静けさが広がっていた。私にとって本当に驚きであった。

 およそ3万坪の庭園内の中央には、大きな池が設けられていた。そして中ノ島をはじめ、二つの島に数本の美しい橋が架けられていた。その周りには歴史が誇るにふさわしい高木が6100本。その一本一本が大変な年輪を重ねる大木であった。散歩を楽しんでいると、時折小鳥たちの囀りが心地よい癒しとなって聞こえてくる。

 この六義園は五代将軍・徳川綱吉の信任も厚かった川越藩主・柳沢吉保が1702年に築園したもの。江戸時代から残っている、数少ない代表的な大名庭園の一つである。明治に入って三菱の創業者・岩崎彌太郎の別邸となり、その後東京都に寄付されている。国の特別名勝にも指定される貴重な文化財である。

 池に目をやると大きな鯉が悠々と泳いでいた。緋鯉が目立ってはいたが、それ以上に真鯉もたくさんいた。みんな楽しそうに泳いでいるように私には見えた。近くに亀もポッカリ浮かんでいた。そして庭の所々に紅白の梅が、美しく花を咲かせていた。鶯も素早く飛んでいるのが見えた。長閑な早春のひと時であった。時折冷たい風が頬を刺す。それは300年の歴史を感じる風であった。

撮影2006年 春