◆鳥取城が夢の跡

 青春時代に勉学あるいはスポーツに励む姿は、本当に美しいと思う。周りから見ていても応援のエールを送りたくなる。高校時代の私は柔道部に所属していた。体力の限界に挑戦し続けた毎日であった。苦しい練習ではあったが、次第に柔道部員同士のなかで、心の通い合う絆が結ばれていった。

  それは高校2年生の夏の合宿の時であった。鳥取市内の伝統と格式のある道場に決まった。目の前には鳥取城跡と鳥取西高校があった。練習は過酷を極める厳しいものであった。その上に暑さとの戦いも加わった。練習が終わると同時にみんな倒れてしまい、しばらくは起き上がれなかったほどだ。私はいつも庭に撒く水道で身体を冷やして英気を養った。

  大阪から合宿に来たということで、鳥取県警の機動隊からも、鳥取大学柔道部も練習に参加された。その様子を地元テレビも取材に来られ、頑張らざるを得ない緊張感が続いた。そのうち近所の住民から、女子高生まで見学に来られるようになった。練習が終わって女子高生数人に喫茶店に誘ってみた。しかし鳥取では高校生が喫茶店に入ることは許可されていないとの返事に、カルチャーショックを感じたことを覚えている。

  あれから40年の歳月が流れた。あの時の道場は今もあるだろうか。その当時でも相当古い建物であったので、多分−−−。車で辺りを探してみた。そこには立派な建物が建っており、面影は全く残っていなかった。ふと鳥取城の山を見上げてみた。何もない山であった。しかしよく見ると一部城跡が残されていた。あの時の女子高生は今どうしているであろうか。妻として母として幸せな家庭に包まれているに違いない。大学生の人達も還暦を迎えたであろう。過去の思い出が通り過ぎていく。

 撮影2005年 秋