◆生命のビザに感動

 生命以上に価値あるものはこの世に存在しない。しかし世界の歴史の中でその尊い生命が軽視され、まるで虫けらのごとく扱われた悲しい出来事が幾度となく繰り返された。それは一部の間違った指導者の判断によるもので、いつの時も犠牲になるのは社会的弱者であった。何の罪もない老人、子供、女性等。それは卑劣極まりない人間の仮面をかぶった悪魔であり、その象徴がドイツのヒトラーである。

 数年前に「シンドラーのリスト」という映画を見たことがある。第二次世界大戦中のナチスドイツの、ユダヤ人狩りがテーマとなった悲しく残酷なものであった。工場経営者のシンドラーが労働力確保を理由に、一人でも多くユダヤ人の採用に努力。しかしそれにも限度が。採用リストから漏れた人間はアウシュビッツ送りとなる。それは死を意味することになる。辛く悲しい映画であった。

 これと同時期に杉原千畝という日本人外交官がいた。彼はリトアニア領事代理として人道的立場から、6000人ものポーランド系ユダヤ人に日本のビザを発給した。彼のサイン一つで一人の命が救われた。サインを貰えるか貰えないかが生と死の分かれ道となった。そのサインは生きることが保障された「生命のビザ」となったのである。

 ビザを手にしたこれらの難民は、シベリア鉄道経由でウラジオストクに向かい、日本海を渡って着いた所が福井県敦賀であった。写真にある「旧敦賀港駅舎(再現)」が彼らを迎えた。杉原千畝(1900〜1986)という一人の勇気ある行動が、尊い生命を救ったのである。この世で最も偉大なる行為とは、人間の生命を守ることであると思う。杉原千畝に心からの拍手を贈ると共に、我われも身近な中で人助けをしたいものだ。意外とそれは小さな親切から始まるのかも知れない。

撮影2005年 秋