◆峰山高原の思い出

 思わず「ワッー」と声を上げてしまった。満天の夜空を見上げると、まるで一面宝石を散りばめたように輝きわたっていた。都会では味わうことのできない美しい星座に、宇宙の神秘を心から感激した瞬間でもあった。それは兵庫県の山岳地帯にある大河内町に行った時のこと。人里離れた友人宅に泊めて頂いた。あの夜空の感動は、生涯忘れ得ない思い出でになっている。 あれから25年が経過した。その後も親友が近くにいることもあって、何度か訪ねている。親友夫婦と共に「峰山温泉 豊楽」という旅館に泊まったことがある。入り口には珍しい特別天然記念物に指定されている「サンショウウオ」がいた。大きさにして70〜80cmはあろうかと思えるもので、グロテスクな顔形は決して可愛いものではない。きれいな水でしか住めない「生きている化石」と呼ばれる稀少動物である。

 訪ねた時は寒い冬でもあり、身体が温められたボタン鍋の味が今も忘れられない。それは猪の肉をまるで花の牡丹のように、大皿に盛り付けたもので、見た目も本当に美しいものであった。味噌をベースにした鍋料理である。

 旅館から山を登っていくと「峰山高原」(標高800m)があり、夏は麓に比べると気温にして4〜5度も低く、タップリ清涼感を味わえる。蒸し暑い気候から開放される楽園の地である。こんな所でゆっくりと何もかも忘れて過ごしてみたい。庭には夏では見れないススキが風に揺れていた。

 撮影2005年 夏