◆静かなり新宿御苑

 池を見ると一面に真っ白な睡蓮が咲いていた。そしてバラ園では美しさの峠は少々過ぎたものの、バラがこんなにも沢山の種類があったのかと驚かされた。まるでヨーロッパによくある西洋庭園をイメージさせてくれる。そして驚くほどの立派な大木があちこちで見られ、歴史の古さと落ち着きを感じさせてくれた。実に広大な園内であった。

 ここは日本一の歓楽街と言われる新宿に面した「新宿御苑」である。新宿は24時間休むことのない街。朝の3時であっても、輝くネオンのなかに人通りの賑やかさは絶えることはない。その環境のあまりにも大きなギャップに驚きは禁じえない。園内に入れば都会独特の騒音は全く聞こえない。小鳥の囀りが一層静けさを強調させてくれる。静かだ。本当に静かだ。まるで別世界にいるような錯覚さえ覚える。

 新宿御苑のルーツは古く、1590年徳川家康が江戸城に入城した際に、家臣であった内藤清成の江戸屋敷の一部となる。その後、皇室の庭園から、1949(昭和24)年に一般公開をされた。その間、観桜会、観菊会の会場として定着するなど、ゴルフコースにも利用されたこともあった。

 広大な敷地を有する園内を見て歩くにつけ、これまでここを保有し管理してきた力ある人達の美的感覚、創造性、そして実行力に羨ましさを感じた。と共に、これだけの財産を後世の人達に、残し伝えたことに感謝の気持ちが込み上げてくる。ここは人間の心と健康のオアシスなのだ。

撮影2005年 夏