◆京王プラザでの大失敗

 それは日本のホテルが、超高層ビルになっていく魁であった。新宿西口の開発がスタートしてまもなく京王プラザホテルは完成した。そして1971(昭和46)年6月より開業している。ホテルの素晴らしさはテレビ・新聞・マスコミから取り上げられ、日本国中から大きな注目を集めた。広い窓から見える眺望は、東京の全てを見渡せた。ゆったりした空間、ゴージャスなインテリア。ロビーに入っただけで気分一新、何かお金持ちになったような錯覚さえ感じる。

 私と同期入社で少し年上であったが、仲の良い優秀な先輩がいた。職場では「ビッグスリー」と呼ばれ、大物という意味でなく、ただ身体が大きいだけの3人のうちの彼と私。月に一度は3人で食事会を持った。その彼が結婚することになった。相手の女性は優秀で大変な美人であった。場所は完成して3年ほどしか経ってない「京王プラザホテル」。

 

 私も祝福の気持ちでいっぱいだった。光栄にも式に招待を受けた。彼からカメラを撮ってほしいと依頼された。当日は素晴らしい会場での結婚式であった。カメラマンは私一人。36枚撮りのフィルムを2本ポケットに入れ、カメラに入っている残りのフィルムから写せば充分だと判断。新郎・新婦の喜びの姿を夢中で撮り続けた。司会からお開きの挨拶。シャッターを押し続けてフィルムを巻く時、いやに軽いなーとは思ったが後の祭り。顔面蒼白になるのが分かった。カメラにはフィルムが入っていなかったのだ。慌ててフィルムを入れ、解散になったロビーでの2人を5〜6枚撮った。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。わが人生最低の大失敗であった。

 今思い出しても冷や汗が出てくる。その彼が現在東京で幸せな家庭を築かれていることを知り、私としては嬉しい限りだ。そのご夫婦から「阪神淡路大震災」で被害を受けた私に、いち早く真心からのお見舞いの手紙と、心温まる生活用品を届けてくれた。ありがとう。本当にありがとう!そしてあの時の大失敗を許して下さい。

撮影2005年 春