◆心に残る童謡

 子供の頃、家の近くで「とんぼ」をよく取ったものだ。山に近いとはいえ神戸の街中でも、秋口ともなれば赤とんぼが40〜50匹程、かたまりになってスイスイと飛んでいる。アミを持ってとんぼと戯れる。私はとんぼ取りの名人であった。ポイントはスピードにある。とんぼより早くアミを動かすことだ。

 これまで日本の童謡で親しみ度No.1は「赤とんぼ」であるとか。詩人・三木露風(明治22年〜昭和39年)の作詞である(作曲は山田耕筰)。彼は兵庫県龍野市に生まれている。龍野市は「揖保乃糸」の手延べ素麺、「色をつけずに良い味つける」の龍野薄口醤油。その他、皮革製品等、古くからの伝統を守り「播磨の小京都」ともいわれる城下町である。さらに周りは自然がいっぱいで、山と川、それに田んぼが一面に開け、のどかな田舎風景が美しい。

赤とんぼ

 「♪〜夕焼け小焼けの 赤とんぼ

負われてみたのは いつの日か

 山の畑の 桑の実を

小かごに摘んだは まぼろしか

十五でねえやは 嫁にゆき

お里のたよりも 絶えはてた

夕焼け小焼けの 赤とんぼ

とまっているよ 竿の先 」

 この歌は少々童謡にしては、歌詞が難しいように思う。しかし日常生活のなかで夕焼けを見たときに、自然とこの歌を口ずさむから不思議なことだ。童謡とはそんなものかも知れない。幼いときに覚えた歌は生涯忘れない。何かあれば鼻歌のごとく自然に歌ってしまう。それが童謡だ。歳を取っても「♪〜夕焼け小焼けの 赤とんぼ〜」。

撮影2005年 冬