◆ 神戸大橋を越えれば「未来」

 「未来を想像して絵に描いて下さい」といわれて、子供たちは試行錯誤しながら、思い思いの未来を描いた。子供の想像力は奇想天外で面白い。とても大人では考え付かない意外性と、子供独自の世界があるのだ。そこには飛行場があり、モノレールが走り、高速道路が縦横無尽に走り、動く歩道まである。これが50年前の子供たちの夢の世界であったように思う。

 神戸港の沖に広大な面積を持つ人工島が完成した。この島の中には未来がいっぱい詰まっていた。ジェットコースターを始め、家族で楽しめる遊園地。スポーツを主とした多目的ホール。国際会議場に展示場。超高層ビルの豪華なホテル。近代設備を備えた市民病院。それに生活に便利な高層住宅。世界一のコンテナ船の港。島を一周するのにモノレールに動く歩道。現在建設中の神戸空港。何と子供のときに描いた夢は、この島に全てセッティングされ、現実の社会で実現しているのだ。この島は15年の歳月をかけて「未来」が造られた。人間の限りない実行力に心から敬服する。

 この未来の島「ポートアイランド」に渡るには橋がなくてはならない。それが「神戸大橋」で1970(昭和45)年に完成している。橋の上段は三宮方面へ、下段はポートアイランドへ通じる車の一方通行となっている。橋長は319m。島の完成が1981(昭和56)年。開島に合わせて「神戸ポートアイランド博覧会」が開催されている。未来の島は全国民に大きな夢と希望を与え、博覧会も大成功している。

 私の妻が「神戸大橋」を水彩画で描いたことがある。海と空の青さの中に、赤い橋が際立って映えていたことを、印象深く記憶している。その絵は結婚式場に飾られた。新しい人生の出発に、この橋を渡れば素晴らしい「未来」が開ける願いを込めて。

 撮影2004年 秋