◆ 日本庭園「偕楽園」の美

 日本人には古来より世界に誇れる素晴らしい美的感覚を持っている。その一つが日本庭園である。人間は権力・財力を持つと当然ながらその証として、城とか住居に力を入れて自己主張をしてきた。莫大な財を投資し、沢山の人を使って目的を果たした。そこには大きな犠牲を払ったかもしれない。しかし新しい高度な文化も発展したことも確かである。皇居を始め、大阪城、名古屋城、姫路城等々、どれも広大な土地に見事なる城と庭が造られている。商業主義の日本社会にあって、都会のビルが建ち並ぶ真ん中に美しい空間が、今日まで大切に守り続けてこられたことは高い文化性の現われなのであろう。

 これらの中には世界文化遺産に登録されたり、国の文化財に登録されているものも沢山ある。今アメリカでは日本庭園が静かなブームを呼んでいる。これは日本庭園の良さが世界に認められている証拠でもある。

 茨城県水戸市には実に見事な日本庭園「偕楽園」がある。これは1842年の江戸時代に、水戸藩第九代藩主徳川斉昭公によって造られた。御成門から園内に入ると一面一杯に梅林が広がり、その数の多さに圧倒されてしまう。100種類3000本というから驚きである。これらの庭園を守る係りの人が、一生懸命手入れをしたり掃除をしている姿に接し、感謝の思いを持たざるを得ない。お蔭で162年もの長期にわたり、この美しさが今日まで保たれている。

 梅のほか、桜,ツツジ、フジ、ツバキ、竹等、それどれの花の美しさを年中楽しませてくれる。なかでも「好文亭」は二層三階の建物で、前面には千波湖が眺められ、庭の美しさと合わせれば、まるで一幅の「絵巻」を見ているようである。建物内の各部屋には、紅葉、菊、桃、萩等の見事な襖絵が描かれており、贅沢の極みであるように思えた。この「偕楽園」は、岡山の「後楽園」・金沢の「兼六園」と共に、日本三名園として数えられ、今日多くの人を楽しませてくれている。

撮影2004年 夏