◆ 讃岐は「うどん王国」

 最近「讃岐うどん」が全国的にブランド商品として人気を呼んでいる。東京・大阪を初め各地でお店が生まれている。その理由にうどんの美味さが一番だがとにかく安い。そしてうどんの上にのせる様々なトッピングを、自分の目で見て選べる楽しさにある。私の父方の先祖のルーツは香川県讃岐である。母方は徳島県阿波である。「讃岐男に阿波女」と縁起をかついだ言葉がある。私の両親のことかも知れない。

 1966(昭和41)年に中央大学に入学した。慣れない東京生活の中で最も驚いたことの一つに、うどんのダシの色であった。まるで濃口醤油そのままの色で、上から見てうどんが残っているかどうかが分からない。箸でかき回しながら確認する始末。こんな「うどん」でも東京で10年も暮らすと貧乏生活ゆへに、いやでも駅前の「立ち食いうどん」に入ってしまう。しかし慣れとは恐ろしいもので、たまに関西に帰ってうどんを食べると、今度は薄いダシの色に水っぽく感じたのだ。でもやっぱり薄口の微妙な味を追求する関西の方が、私には合っているようである。 「日本三大うどん」といわれるのが秋田の「稲庭うどん」、そして名古屋の「きしめん」、香川の「讃岐うどん」である。その他、群馬の「水沢うどん」、長崎「五島うどん」も美味しい。太いうどん、細いうどん、各地元で試行錯誤しながら「美味いうどん」を目指して努力は今も続いている。

 香川県三木町役場のすぐ近くに、大きな看板を見つけて「讃岐うどん」のお店に入った。100人近くも入るであろう、大きな店内は全てセルフサービス。注文にもたつく間に、もう後ろは数人の客が並んで待っている。私は妻と同じ「ざるうどん」を頼んだ。シンプルな「うどん」であるが食べてみて驚いた。我が人生56年にして最高の味に巡り合えた。つるつると喉ごし良く口に入っていく。本場で食べる讃岐うどんがこんなに美味しいとは。感動した。知らない店に入るには少々勇気がいるものだ。しかし安くて美味しい物に出逢った時、人生の喜びと幸せを感じる。名刺の裏に「ありがとう!」の感謝の言葉を添えて店の人に渡した。私はこの日の「讃岐うどん」の感激を生涯忘れない。 

撮影2004年 夏