◆ 淡路島・福良港のハモ

 私の祖父(母の父)は神戸中央市場の魚卸の部門に勤めていた。自分で料理して食べる魚は決まって「フグのてっちり」である。それも毎日フグが続く。これまで三度死にかけた。家の前の庭で首まで土で埋められ、フグの毒素を体から抜くのである。葬儀の手配までして生き返る。しかし翌日はまたフグを食べる。それほど祖父にとって美味い食物だったのであろう。今の人から見ればうらやましい限りである。その祖父の家に私が行くと決まって「ハモの蒲焼」を出してくれる。炭火でこんがり甘いタレの香りに肉厚のハモは、子供ながら忘れ得ない味となった。

 淡路島の福良港は冬のフグは当然ながら、秋のヒラメ、更にはアワビにサザエ。しかし何といっても夏のハモは特に名物になっている。祇園祭の時期ともなれば、ここで取れるハモは、京都へと送られる。夏の暑さ厳しい京都では、ハモのスタミナ料理は欠かせない昔からの生活の知恵なのかも知れない。そういえば「ハモ」のほか「うなぎ」にしても「ウツボ」も良く似た魚であるが、共通する点はスタミナ料理であることだ。福良港の周りの山々には大きなホテルや料理旅館があちこちに建っている。新鮮な魚が売り物なのであろう。今はハモの時期真っ盛りなのだが。これまで祖父のハモを超える味に巡り合ったことは一度もない。思わずメニューと値段の高さに驚きながら素通りしてしまった。

 福良港には過去何回か来たことがある。四国・鳴門への渡し舟として、また近くにある魚釣りのメッカ「沼島」への渡し舟として、大いに栄えた港であった。しかし四国への航路は1985(昭和60)年に大鳴門橋の開通により、これまで続いた時代は終わりを告げた、しかし自然に恵まれた良港は決して死なないものである。鳴門海峡の「渦潮めぐり」の観光船は、多くの人の心を捉えている。大鳴門橋の下はまるで川のような速い流れであり、そこに出来る大きな渦潮は、自然の驚異を感じざるを得ない。今後とも観光と漁業の二本立てで、いつまでも栄えて欲しいと願いつつ、大鳴門橋を通って四国へ旅を続けた。

撮影2004年 夏