◆クラーク博士から学ぶもの

 "Boys, be ambitious!" 「少年よ!大志を抱け」ウィリアム・S・クラーク博士の言葉である。彼は1826年7月31日にアメリカ・マサチューセッツ州に生まれている。アマースト大学を卒業した後に、ドイツのゲッティンゲン大学で博士号を取得。帰国後は母校の教授などを務める。更に1867年にはマサチューセッツ農科大学の学長に。その後1876年北海道開拓使長官の黒田清隆に招かれ来日。同年北海道開拓の人材を育成するために札幌農学校(現在の北海道大学)が開設された教頭として着任。僅か9ヶ月の滞在であったが、精力的に農学校の基礎を作り新渡戸稲造、内村鑑三、佐藤昌介などの直接間接の弟子を育てる。

 先生と生徒、つまり師匠と弟子の関係は、高き精神性を持つ人間だけがつくりえる特権である。教育の世界でも、芸術、スポーツ、職人の技も、自らを高めゆかんとするところには師弟がある。国が違い、歴史、文化、言語、習慣等、あらゆるものがたとえ違っても、師弟の絆・信頼があればクラーク博士と生徒の如き、素晴らし人材を世に輩出することになるのであろう。博士は大志を抱けと叫んだ。「志」が「人」をつくる。大きな志は大きな人間をつくる。教育の核心は、その「志」をどう引き出し力を発揮させるかにある。一国の運命・将来がどうなるかは、偏に若者をどう教育し育成するかにかかっている。教育の荒廃は将来の国の荒廃にも繋がる重要な課題でもあるのだ。

 爽やかな新緑の風がキャンパスに香り、小川の辺の草むらには寝そべりながら本を読む姿が。 北海道大学の学生達は長かった冬から、春を謳歌するように、季節を楽しんでいるように見えた。この一角にクラーク博士の胸像はあった。北国を象徴するかの如く、その周りには白樺の樹が植えられていた。近くを歩く学生の誰もが優秀に見えた。その時に目が会った何人かの学生に「これからの日本を頼むよ!」と、心の中で声を掛けた。

撮影2004年 春