◆日本銀行本店

 これまでお金がありすぎて困ったという経験は残念ながら一度もない。私の人生お金からあまり好かれていないようである。負け惜しみではないが、お金は生きていくために必要な分、ギリギリあれば幸せのように思う。多すぎても少なすぎても困ってしまう。

 初めてタバコを吸ったのが23歳。それから50歳まで一日たりとも休むことなく吸い続けた。吸い始めた頃は別として1日2箱500円。一年すれば500円×365日=182,500円。それを単純に年数で掛けると何と約500万円にもなる。大変な金額だ。しかし幸いにも50歳でタバコは止めることが出来た。それから7年が経過した。金額にして120万円にもなる。今そのお金が自由になるとすれば何に使うか、我が人生最高の贅沢な悩みとなってしまう。夢は想像するだけでも楽しい。

 東京駅八重洲口側から北東に数分歩くと、周りの建物とは全く異なった古典的で、且つ荘厳な格式を醸し出している建物に出逢う。日本銀行本店(旧館本館)である。実際には初めて見るのだが以前から何度も見ているような気がする。良く考えて記憶を辿ってみると「そうだ!」何かのお札に、この建物が印刷されていたことを思い出した。「銀座」と言えば東京の有名な繁華街であり、全国的にも知らない人はいない。しかし「金座」と言うとあまり知られていない。ここは江戸幕府の造幣所が地名になったもので、金座は大判・小判の金貨が造られ、一方銀座は一分銀などの銀貨が造られた所でもある。 この建物の設計者は辰野金吾「日本近代建築の父」と呼ばれた人。日本銀行小樽支店、大阪支店を始め全国各地の支店を設計。更には国技館、東京駅もそうである。特にここ日本銀行本店はベルギーの中央銀行を手本に、レンガ造りでありながら瀬戸内海の御影石も使用している。1896(明治29)年に竣工。そして1974(昭和49)年には国の重要文化財に指定されている。

 ともあれ、これまでよりも自由に使えるお金が、ほんの少しで良いから廻って来ることを祈っている。日本銀行発行のお札さん、待ってまっせ!

撮影2004年 春