◆忠犬ハチ公

 「今夜7時、渋谷の忠犬ハチ公前でね!」渋谷駅での待ち合わせ場所として知らない人がいないほど有名である。私の生活圏は中野、新宿であり、普段は自分からすすんで渋谷へ行くような事はほとんどない。したがって思い出も少ないのだ。私が大学4年の夏休みの時である。アルバイトで外国からの人達の案内、お世話をさせて頂いたことがあった。私はそうした中でアメリカ人のある女性に恋をしてしまった。年は同じでシアトルに住んでいるとのこともあって非常に親近感を覚えた。と言うのはシアトルと神戸は姉妹都市であり子供の時からよく知っていたからである。

  今ではアメリカ大リーグの「シアトル・マリナーズ」の野球チームでのスーパースター「イチロウ」。更には大魔神の「佐々木」、ストッパーの「長谷川」等、日本に大リーグの野球を身近にさせてくれたチームである。その所在地がシアトルなのである。

 彼女の名前は「シルビア」。白人で金髪、目は青く庶民的な気安さが魅力的であった。来日中の多忙な日程の中ではあったが、たまたま二人とも同じタイミングで自由時間が取れ、彼女を誘って喫茶店に行ったのが渋谷でありました。「ハチ公」より歩いて喫茶店へ向かったが、驚いた事に彼女は靴を脱いで手に持ち、裸足で歩き出したのである。実は長身の彼女がハイヒールを履いていると私より少し背が高くなってしまう。そうした心遣いなのであろう。しかし渋谷の大都会を平気で裸足で歩けるのは、やはりアメリカ人でしか出来ない行動であった。当時は東京といえども、まだまだ外国人は少なく目立つ存在であった。気さくに手をつないでその格好で二人仲良く歩いていると、周りから注目して見られているように感じられた。しかし悪い気持でもなかった。

 「忠犬ハチ公」前でこれまで沢山の人が待ち合わせをしたことであろう。「人と人との出会い」それは素晴らしい人生ドラマの始まりであってほしい。 

撮影2004年 春