◆ 路面電車を見直そう

 新幹線岡山駅を降りた目の前に路面電車が走っていた。子供の頃はこれによく似た神戸の市電に乗ったものである。「神戸まつり」の日は学校が休日になり多種多彩のイベントが開催された。「花電車を見に行こうよ!」市電の終点「板宿駅」近くに住んでいた私は、漫画のキャラクターを模った設営や、綺麗な造花で華やかに飾りつけした電車を見に行ったものである。特に夜になると色とりどりのイルミネーションで光り輝き、あたり一面が昼のような明るさに、見物人の目を楽しませてくれた。

 あれから何十年経ったであろうか、あの時の路面電車はもう走っていない。車、バス、地下鉄に時代は変わってしまったようである。岡山の路面電車を見た時に、子供の頃の思い出が走馬灯の如く懐かしく蘇って来ました。

 日本の路面電車は時代と共に廃線となる方向に向かっているように思えます。これは車社会が一層進み、より便利になっていったからであります。しかし車が増えれば増えるほど厄介な問題も多く出てきました。それは排気ガスによる汚染、更には騒音、交通渋滞によるストレス、駐車違反、交通事故‥等。このまま行くと環境破壊にも繋がり、人間生命をも脅かし精神的にも決して良いとは思えません。そのように分かっている私自身も車で通勤し、毎日仕事で乗り回している現状であります。お陰で歩くことがほとんどなく、大変な肥満になってしまっており成人病への道をひたすら進んでおります。

 最近テレビを見ているとヨーロッパのある都市で、路面電車が見直された成功例の放映をしておりました。フランスのストラスブール、オランダのアムステルダム、ドイツのフライブルク等。オーストラリアへ行った時にメルボルンでも見ました。一度廃止された後しばらくしてから復活したところもあります。日本でも、東京、大阪、松山、長崎等まだまだ沢山残っている。車もこれから電気自動車へ進化しようとしている。今再び路面電車が見直され、時代のニーズにあった乗り物として更なる実用化へ発展することを願ってやまない。古いものをただ廃棄すればよいのでなく、有効に利用する知恵を持ちたい。

 岡山の路面電車はゆっくりとしスピードで、市民の身近で便利な足として私の目の前を走り去って行った。電車のボディーには岡山が生んだ日本を代表する和菓子の大手メーカー「源吉兆庵」の看板が大きく描かれていた。いつまでも走り続けてほしいと願いを込めて新幹線に乗り込んだ。

撮影2004年 春