◆新歌舞伎座は永遠に

 私が今住んでいる神戸の家は、55年前に父親が建てたもの。この自宅から100mもはなれていない所に芝居小屋があった。それは私が小学生の低学年の頃で、役者の名前を書いた旗が景気良く何本も立っており、興行を大いに盛り上げていた。入り口には役者の写真に芝居の看板等、客寄せの魅力がいっぱい。私も2〜3度見た記憶があるが、座長ともなれば大スターそのもの。大変な人気である。芝居を生で見ると大変な迫力を感ずると共に、役者の熱演に客も一体となってその感動に酔ってしまう。

 当時は映画館はあったものの、テレビはまだ放映されていなかった。したがって芝居のファンも多く、芝居小屋もあちこちに建てられており、全国各地に巡業されていつも新鮮な演技が楽しめた。その流れは21世紀に入った今も細々ながら生き残っている。温泉街にヘルスセンター等、大型浴場の休憩室に舞台がセッティングされ、大いに盛り上がり、役者と客がカラオケを通して交わり合っている姿は、時代の進化であろう。

 御堂筋のミナミの終点近くに、ひときは時代を感じさせる立派な建物に目を釘付けにされてしまう。それが「新歌舞伎座」である。新とあるのは旧があってのこと。実は1932(昭和7)年大阪歌舞伎座として場所は千日前に完成している。観客3,000人を飲み込むほどの大劇場は今の時代でもめったにお目にかかれない。しかし時代と共にこの器を維持するにはあまりにも大きすぎたようで、その後はデパートに変身を余儀なくされたようである。そのデパートの最上階にキャバレーがありそこから出火。たしか100人以上の犠牲者を出してしまった。あまりの大惨事に建物は取り壊された。

 1966(昭和41)年5月新たに「新歌舞伎座」として、現代の場所に移転されスタートしている。総収容人数は1,638名。娯楽の殿堂・大阪なんば新歌舞伎座として、これからも皆さんに愛されるステージをおとどけしますとのキャッチフレーズで、舞台俳優をはじめ歌手等幅広いアーティストで人気を集めている。

撮影2004年 冬