◆神戸港の赤いタワー

 神戸の中学生の修学旅行は決まって東京であった。当時の東京で一番話題になっていたのが「東京タワー」で、1958(昭和33)年に完成している。我々はその3年後に修学旅行で見学したことになる。高さ333mはエッフェル塔の320mを抜いて世界一。敗戦後の日本に大きな自信を与えてくれたのが「東京タワー」の完成であったのです。

 東京タワーより遅れること5年。「神戸ポートタワー」は完成している。神戸港のど真ん中にあたる中突堤に、高さ108mの鼓形タワー。360度のパノラマからの展望台は大変な人気で、連日のごとく見学者の行列ができたほどであった。この上からは海があり船が見え、山があり緑が見え、大都会がありビルが見え、美しい景色は時間がたつのも忘れて見惚れてしまう。

 1995(平成7)年1月17日の阪神淡路大震災を思い出すのは、神戸に住む私たちにとっては大変辛いことである。神戸市の表六甲側はビルも高速道路も倒れ、家が壊れ、大なり小なり全ての人が被害を受けている。しかしその中にあって「神戸ポートタワー」びくともしなかった。その理由はいくつかあるが、一つには地上に出ている部分より、地下の重量のほうが重く造られており、非常に安定性があったことである。これまで神戸は地震とは無縁のものと思っていた。この建設にあたって何度も地震対策の実験がなされたとのこと。工事関係者に対し心から敬意を表したい。

 「タワー」と名のつく建物は全国各地にたくさんあるようだ。一方世界に目を向けてみると、驚くほど高いものがある。カナダ・トロントにある「CNタワー」は高さ553m。ロシア・モスクワの「オスタンキノタワー」は540m。中国・上海の「オリエンタルパールタワー」は468m。更に高層化は進む一方で、ニューヨークのマンハッタン。東京の新宿西口。限られた土地ゆえに仕方ないかもしれないが、地震、テロ等で高層ビルが破壊されないことを祈らざるを得ない今日である。

撮影2003年 秋